全国図書館大会2日目の午後は、多文化サービス分科会に出席。
もともと「図書館利用に障害のある人へのサービス」の一つとして位置づけられてきたそうだが、今年初めて「多文化サービス」単独の分科会が開催されることになったという。 私が「多文化サービス」という言葉と出会ったのは、いまから15年くらい前、『多文化社会の図書館サービス:カナダ・北欧の経験』深井耀子著(青木書店)という本を読んだときだった。 その後「むすびめの会(図書館と在住外国人をむすぶ会)」の活動などについて関心をもっていたが、参加したことは無く、今回初めて体系的なお話を聞くこととなった。 冒頭の小林卓さんによる基調講演「多文化サービスのこれまで、これから」は、とても興味深い内容だった。 とくに「視覚障害者の読書環境整備を」という1971年に視覚障害者読書権保障協議会(視読協)が発表した文章を2回朗読し、最初は原文通り、2回めは視覚障害という言葉を在住外国人に置き換えても、まったく違和感が無いという話から、かつて「図書館利用に障害のある人へのサービス」が問題提起した「すべての住民に公平で平等な図書館サービスが提供されるべきである」という、現在でいえば「ユニバーサルデザイン」の観点の中に、在住外国人も包括していくべきであるという主張が鮮烈であった。 かつて視読協の運動の柱として、ニーズをよく理解している当事者を職員として採用してほしいという項目があったが、多文化サービスの取り組みの中でも、図書館に在住外国人をスタッフとして採用する必要性を挙げておられた。 事例報告の一つとして、高田馬場にあるビルマ図書館(モータウチェー図書館)の紹介があり、質疑応答の中で「資料の疎開」という意味もあるという話が印象的だった。 (現在、ビルマはミャンマーという名前で軍事政権下にあり、情報統制が厳しく、自由な出版活動が保障されていない。そこで、外国に資料を集めている側面もあるのだという) この発表されたソー・ウィン・シェインさん(月刊「モータウチェー・ジャーナル」編集長)がお話されたモータウチェー図書館の目的はつぎの4つだという。 1.ビルマ国内で手に入らない本を集めて、みんなが読めるようにすること。また、日本の図書館にビルマの本があまりないので、日本にいるビルマ人のための本を集めること。 2.若い世代の人たちに、本当のビルマの姿を知ってもらうこと。そして、ビルマ人としての自覚を持ってもらうこと。 3.ビルマの習慣、伝統、文化を若い世代に伝えること。 4.図書館を使う人たちみんなが、ビルマと、日本のような、今自分がいる国との違いを、学ぶようになること。 また、地球市民かながわプラザの方の発表の中で、「外国籍住民生活実態調査」についての報告があり、とても興味深い内容だった。 とくに、参加者との意見交換の中で、さまざまなNPOが多言語資料を作成しているが、それがなかなか当事者に届かないというジレンマがあり、「どのように情報を届けていくか」という課題が取り上げられていたのが印象的だった。
by mejiroh
| 2007-10-28 01:19
| メジローが行く!
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