花村萬月の「父の文章教室」(集英社新書)を読む。
以前から文章がうまいなあと思っている作家の一人なのだが、この本を読むと、そのルーツを少しだけ垣間見ることができる。 6歳ごろ小説家志望(あくまで「志望」で、定職には一切つかなかったため貧困を窮めたという)であった父からいきなり渡されたのが旧かなづかいの文庫本。意味がわからないながらも、読むことを強要されているため、1字1字活字を目で追い、あてずっぽうで読み上げていったという。 それは決して英才教育といったものではなく、泳げない子どもをいきなり海につきおとす式のものに近い。 そして、花村氏が文章について強調して語っているのは、「絵画」「音楽」との関連性である。 たとえば、「静」という文字を「静か…青い争い」と読むことができるように、漢字かな混じりの文章はとても視覚的な要素が強い。ここで白川静氏の「漢字百話」を例に挙げ、この本を読むと「言語と視覚は対立するものではなく、お互いに密接に絡み合っている」ことが導入から解き明かされると説く。 また音楽との関連では、リズムが大切であるという。 「リズム感の悪い者は文章家になることをあきらめなさい。逆にリズムのよい文章は、内容的に大したことが書かれていなくても文芸として成立する」と言い切っているのが印象的だ。
by mejiroh
| 2005-06-06 18:54
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