ヨーロッパの映画には、「孤独」と向き合うといったテーマが多いように思う。
スペイン出身のイザベル・コイシェ監督「あなたになら言える秘密のこと」(原題:The Secret Life of Words)もそうした一作である。(あまりよい邦題ではないと思う) サラ・ポーリー扮する主人公ハンナは、騒音がはげしい工場に勤めているが、他の工員がつけているノイズキャンセル・ヘッドホーンを一人だけつけない。それは、彼女は補聴器を使っていて、工場に入るとボリュームをさげているからだ。 昼食は毎日、リンゴと米と鶏の唐揚げを食べ、仕事が終わるとまっすぐ家に帰る日々。話し相手はまったくいない。 ある日、工場長に呼び出され、1か月の休暇をとるように告げられる。これは主人公が労働組合の集会に一度も出ていないため、組合から会社側に圧力がかかったらしい。 工場長は強調する「君はよくやってくれているんだ。それだけは言っておく」。 彼女はあてもなく長距離バスに乗り、他の客が降りるのにつられるように、知らない町に降り立つ。その町の日本語の歌が流れる店で、たまたま「急いで看護師を捜してくれ」と電話をかけている男を見かけ、「自分は看護師だ」と名乗り出る。 彼女がヘリコプターで連れて行かれたのは、まるで島のように海のまん中に位置している巨大な油田掘削所。そこで、油田事故により大きなやけどを負った瀕死の男性ジョセフ(ティム・ロビンス)の看護をはじめることに…。 ハンナとジョセフそれぞれの「秘密」がだんだん明らかになっていくところが、この映画の肝にあたるが、監督の狙いとしては、孤島のような油田掘削所で長期間暮らしている料理人(単調な日々に変化をつけるため、毎日いろいろな国の料理をその国の音楽をかけながら作っているのだが、船内での評判は悪い)や海洋学者(掘削所にぶつかる波の数と強さを調べているのだが、海洋汚染に心を痛め、自分一人でも海を元に戻すための方法を日々考えている)などが抱えているそれぞれの孤独を散りばめていくことにあったと思う。 ただ、ここでいう孤独とは必ずしも否定すべきことではなく、むしろ自分が自分らしくあるために必要な「時間」ということもできる。 ハンナが抱えている「秘密」はたいへん重たいものであるが、この映画の後味がけっして悪くないのは、じつは「孤独=ひとりであること」をどこかで肯定しているからだと思う。 映画を見終えて、たまたま駅前の書店に入ったら、『孤独であるためのレッスン』(諸富祥彦)という本が平積みになっていた。 ぱらぱら立ち読みしただけであるが、わたしたちはあまりにも他人の視線を意識しすぎて、自分と他人を比べたり、評価したりしすぎている。 また、孤立を恐れるあまりに、いじめに荷担したり、いじめられることを受け入れざるを得ない。 もっとひとりであること、ひとりの時間を大切にしてみようというメッセージの本のようである。
by mejiroh
| 2007-06-12 21:43
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